外国語教育質的研究会

外国語教育質的研究会の理念 2015.4.3

外国語教育における質的研究について、いつでも誰でも、
関心のある方が参加し、学ぶことができる場を提供します。
参加者が、お互いを尊重しながら、それぞれの立場で、
自由に意見を交換し、質的研究の方法論について理解を深め、
研究や授業改善などに役立てることで、各自が成長することを目指します。

 

※研究会はゆるやかなコミュニティであるため、参加形態は多様です。遠方の方でMLのみの

登録の方などもいらっしゃいます。定期的に参加できなくてもご遠慮なくお問い合わせください。

 

ご質問や参加希望者は問い合わせフォームよりご連絡ください。 

 

ゆるやか読書会(洋)第1回

日時:2023年 3/29(水)20:00-21:30  

     *Zoomによるオンライン開催

 

事前課題:

各自事前に論文を読み、1つ以上の質問または議論を深めるための問いを準備しておいてください。

 

指定論文:Roulston, K., & Shelton, S. A. (2015). Reconceptualizing bias in teaching qualitative research methods. Qualitative Inquiry, 21(4), 332-342.

https://doi.org/10.1177/1077800414563803

 

1回で完結しますので、ご関心がある回にご参加ください。どなたでもご参加できます。

※前日にZoomのURLを送ります。

※論文の入手ができない方は、pdfを送りますので、髙木までお知らせください。

 

ゆるやか読書会(和)第23回

日時:2024年4月26日(金)20:00-21:30  

     *Zoomによるオンライン開催

 

指定図書:SAGE質的研究キット7  T. ラプリー (著)、大橋靖史・中坪太久郎・綾城初穂(訳)『会話分析・ディスコース分析・ドキュメント分析』新曜社

 

内容: 

 

 4章 記録の実際

5章 音声とビデオ材料の書き起こし

6章 会話を探究する

 

事前課題:

各自事前に指定の章を読み、1つ以上の質問または議論を深めるための問いを準備しておいてください。

 

申込先:https://forms.gle/twcPSufFbFk86Ywi8

締切:4/24(水)

*どなたでもご参加できます。

 

開催済:

2022年

SAGE質的研究キット1 ウヴェ・フェリック監修/鈴木聡志[訳]『質的研究のデザイン』新曜社

4/29(金・祝)第1回 1章 質的研究とは何か?2章 アイデアからリサーチクエスチョンへ 

5/27(金)第2回 3章 サンプリングと選択とアクセス 4章  質的研究のデザイン

6/24(金)第3回 5章 資源と障害 6章 質的研究の質

7/22(金)第4回 7章  質的研究の倫理  8章 言語データ  

8/26(金)第5回   9章  エスノグラフィデータとビジュアルデータ  10章 質的データを分析する 11章 質的データをデザインするーいくつかの結論  

SAGE質的研究キット2 スタイナー・クヴァール (著), 能智 正博・徳田 治子 (翻訳)『質的研究のための「インター・ビュー」』新曜社

9/30(金)第6回  1章 インタビュー調査ことはじめ 2章 インタビュー実施の認識論に関わる問題

10/21(金)第7回 3章 インタビュー実践の倫理的課題  4章 インタビュー調査を計画する

11/18(金)第8回   5章 インタビューを実施する  6章 インタビューの多様なかたち

12/23(金)第9回   7章 インタビューの質  8章 インタビューを文字に起こす

2023年

1/27(金)第10回  9章 インタビューを分析する 10章 インタビューから得られた知の妥当化と一般化 

2/24(金)第11回 11章 インタビューの知を報告する 12章 インタビューの質のさらなる向上に向けて

SAGE質的研究キット3 マイケル・アングロシーノ (著), 柴山真琴 (訳)『質的研究のためのエスノグラフィーと観察』新曜社

3/25(金)第12回 1~3章

4/28(金)第13回 4~6章

5/26(金)第14回  7~8章

6/23(金)第15回 Sybing, R. (2021). Examining dialogic opportunities in teacher-student interaction: An ethnographic observation of the language classroom. Learning, Culture, and Social Interaction, 28, 100492. 

SAGE質的研究キット5 マーカス・バンクス (著), 石黒広昭 (訳)『質的研究におけるビジュアルデータの使用』新曜社

7/28(金)第16回 1~3章

2024年

SAGE質的研究キット7  T. ラプリー (著)、大橋靖史・中坪太久郎・綾城初穂(訳)『会話分析・ディスコース分析・ドキュメント分析』新曜社

3/29(金)第22回 1~3章

第44回外国語教育質的研究会

日時:2023年3月12日(日)9:00-12:00 

*Zoomによるオンライン開催

 

 

1. 研究発表 9:00-10:40

 

発表者:山本裕也(ニューヨーク州立大学バッファロー校)・髙木亜希子(青山学院大学)

 

題目:英語科教員養成課程履修生の批判的思考力とその教授法に関する経験と認識

 

概要:本探索的事例研究は、中学、高校、大学の英語授業及び教員養成課程における批判的思考力の育成とその方法論に関して、英語科教員養成課程履修者の認識と経験について調査したものである。英語教育において批判的思考力を育成する試みは様々な文脈で行われてきたが、日本では十分に実践されているとは言い難い。また、日本の中学、高校、大学の英語教育において、批判的思考力がどの程度明示的に教えられ、育成されているかについての研究はほとんどない。したがって、本研究では日本の文脈での批判的思考力の育成のあり方を考察するために、英語科教員養成課程の履修者の視点から現状について把握することとした。質問紙調査では記述統計を用い、またフォーカス・グループによるインタビューデータはBraun and Clarke(2006, 2022)のreflexive thematic analysisに基づいて分析を行なった。分析の結果、教師が日本人英語学習者の批判的思考力の育成を支援することの重要性と、英語科教員養成課程において批判的思考力の教授法に関する明示的な指導を受けたいという学生の要望に応える必要性があることが示された。

 

(休憩10分)

 

2. 話題提供とディスカッション 10:50-12:00

 

話題提供者:髙木亜希子(青山学院大学)

 

題目:活動家(activist)としての研究者:私は、何のために研究をしているのか

 

概要:私たちが研究活動において、どの認識論に立ち、どの方法論を選択するかは、各自の信念や価値観に依拠する。しかし、信念の強さや価値観の認識の度合いについては、人それぞれである。Kara(2022)は、研究の方法論を実証主義(positivist)、現実主義(realist)、構築主義(constructionist)、解釈主義(interpretivist)、変革主義(transformative)の5つのタイプに分けた上で、変革主義の方法論が、社会における権力の不均衡や不平等を是正したいと考え、抑圧されたり疎外されたりした人々によって発展してきたことを示した。その中で、活動家が研究者になる場合や、研究者自身が活動家である場合もある。一方で、「全ての研究者は活動家である」(p.31)という考え方もでき、どの認識論に立ち、どの方法論を選択したとしても、中立ではありえず、研究者としてのリフレクシビティが重要となる。そこで、本セッションでは、各自がどの認識論になぜ立脚し、何のために研究をしているのか、あるいはしようとしているのかを振り返っていただくとともに、自分と社会との関わりについて考え、参加者同士で共有することで、あらためて自身の研究者のあり方について考える機会としたい。

 

第43回外国語教育質的研究会

日時:2022年9月3日(土)13:00-16:00 (懇談会16:00-17:00)

*Zoomによるオンライン開催

 

 

1.研究発表とディスカッション 13:00-14:20

 

発表者:髙木亜希子(青山学院大学)

 

題目:質的研究におけるテーマ分析の理解を深めるーBraun & Clarke(2006,2022)のreflexive thematic analysisに着目して

 

概要:本発表の目的は、Braun & Clarke(2006, 2022)が提唱するreflexive thematic analysisに関する概念を整理し、言語教育・応用言語学分野の主要国際学術誌に出版された92論文におけるテーマ分析の取り扱いを分析することで、質的研究におけるテーマ分析のあり方について考察することである。

  心理学者Braun & Clarke(2006)による論文 “Using thematic analysis in psychology”は、2022年4月現在、Google Scholarにおいて12万4千件以上で引用されており、様々な分野でテーマ分析の手法として広く用いられている。しかしながら、彼らは、研究者の立ち位置の違いにより、3つのタイプのテーマ分析(coding reliability, codebook, reflexive)を区別し、本論文が誤った解釈で引用され、主に10の課題があることを指摘している(Braun & Clarke, 2020; Braun, Clarke, & Hayfield, 2019)。Braun & Clarke(2006, 2022)のテーマ分析は、解釈的・再帰的プロセスであり、コーディングはオープンで、枠組みは使用しない。

   Journal Citation Report 2020の言語学分野上位30誌のうち、応用言語学・言語教育に関する学術誌17誌を検索したところ、11誌92論文でBraun & Clarke(2006)が引用され、テーマ分析が行われていた。論文の内訳は、質的研究が63編、混合研究が29編であった。どのようなデータが用いられているか、3つのタイプの混同はあるか、コードとテーマ、またはトピックとテーマの混同はあるか、“themes emerged”という表現が使われているか、という観点から分析したところ、約4割の論文に何らかの課題があることが明らかになった。

   本発表は、2022年6月に中部地区英語教育学会で発表した内容に基づいているが、具体例を加えることで、参加者の皆さんにテーマ分析への理解を深めていただくことを意図している。

 

(休憩10分)

 

2. 研究発表 14:30-16:00

 

発表者:上條武(立命館大学)

 

題目:英国大学院課程L2学生アカデミックエッセイ議論の構成: Reflexive thematic analysisによる探索的調査

 

概要: 大学院や大学におけるアカデミックなエッセイアサイメントはエビデンスベース(Evidence-based)と言われ、L1, L2学習者は学術文献を使用してエッセイを作成する。なかでも議論形式エッセイは成績にも比重が高いアカデミックワークであり、プランニング、文献の選別、評価、適応による議論の構成が関わっている。さらにアカデミックコミュニティへの知識変換の目的にもとづくアカデミックアイデンティティ形成も必要とされる。 

 発表者は2017年から2018年に英国大学院課程で学外研究としてL2学生のエッセイアサイメントの作成に関する研究を行い、分析手法ではBraun & Clarke (2006, 2019)のReflexive thematic analysisを採用した。始めに帰納法でデータのコードを整理した後、そこから最適と考えられるカテゴリーの分類をした。その後には期間を費やして複数のコーディングサイクルによりデータの解釈と文献のすりあわせから、分類したカテゴリーの再評価を行い、テーマの絞り込みをした。 

2019年から2020年にかけてデータ分析と理論化の過程において参照した主要な4つの文献はRouet and Britt (2010) によるMultiple Document Comprehension model、Cumming, Lai, and Cho (2016)が提唱したWriting from sourcesのレビュー分析結果、Wingate (2006, 2020, 2021)によるエビデンスベース議論文エッセイ作成、Maguire, Reynolds, and Delahunt (2020)によるリーディングとemergent academic identitiesであった。  

 主要な文献の内容を評価する中で、Wingate (2006, 2020, 2021)とMaguire, Reynolds, and Delahunt (2020)がより合うことがわかった。これら理論的な枠組みをもとに、大学院でL2学生がエビデンスベースエッセイ作成をする認知、社会文化的なプロセスを調査した先行研究を選別してからLiterature Reviewを行い、最終的には学術的な議論の位置づけにより論文にまとめることとなった(Kamijo, 2022)。  

 このような探索的なデータ分析をさまざまな文献に参照させて理論化を試みる質的研究のアプローチでは、Braun & Clarke (2006, 2019)のReflexive thematic analysisはきわめて有効であった。研究データ分析と評価の実例とともにこの研究手法がいかに質的研究に適応性、有効性があるかについての発表を行う。  

第42回外国語教育質的研究会

日時:2022年6月18日(土)13:00-16:00 (懇談会16:00-17:00)

*Zoomによるオンライン開催

 

1.研究発表とディスカッション 13:00-14:45

 

発表者::太原達朗(早稲田大学)

 

題目:TOEICerはなぜTOEICを何度も受験するのか:複線径路・等至性アプローチを用いた分析

 

概要::2010年代の日本において, TOEIC® (Test of English for International Communication) Listening & Reading Test(以下TOEIC)の受験者数は増加してきた(IIBC, n.d.)。企業が求職者や社員にTOEICスコアを求めたり, 推奨したりするケースがある。大学でもTOEICをプレースメントテストとして採用したり, TOEICスコアを単位認定に利用する場合がある(例:In’nami & Koizumi, 2017)。TOEICスコアを必要とする人が増える一方で, 特定のテスト使用目的が無いのにも関わらず熱心に何度もTOEICを受験する, いわゆる「TOEICer」という人々が存在する。特に海外ではテストはスコアが必要な時に受験するのが一般的であることを考えると, 日本におけるこのTOEICの複数回受験は特異な現象である。TOEIC受験者がTOEICerになる背景を明らかにすることで, 日本人とTOEICの関係だけではなく, 日本人と英語テストの関係(例:江利川, 2011), さらには日本人と英語の関係(例:北村, 2011; 寺沢, 2015)をより理解することが期待される。そこで本研究は, TOEICerがなぜ, どのようにTOEICを複数回受験するに至ったかを調査する。

本研究は複線径路・等至性アプローチ (TEA; サトウ, 2009)を採用し, 日本社会における文化的・歴史的背景に当てながらTOEIC複数受験に至るまでの要因を探索する。本研究の参加者は1名の複数回TOEICを受験した経験を持つTOEICerである。インタビューは計3回実施し, 参加者に初めての英語学習の経験からTOEICの複数回受験に至るまでに経験した出来事を述べてもらった。1回目のインタビューを基にその径路を図示したTEM図を作成し, 2回目以降のインタビューでは参加者にその図を見てもらいながらさらに質問を行い, 場合によっては図の修正を行った。研究会当日はインタビューの分析結果や解釈について, 参加者の皆様と議論を行う予定である。

 

(休憩10分)

 

2.論文に基づくディスカッション 14:55-15:55 

 

ファシリテーター:髙木亜希子(青山学院大学)

 

題目:質的研究において研究者の主観や対話をどのように活かすか

 

沖潮(2020)論文に基づき、質的研究における主観と対話について考察します。本稿の目的は、質的研究において、研究者の主観や対話を用いた研究がいかにして研究たりうるか、その可能性を明らかにすることです。そのために、(1)質的研究は研究である、(2)研究者の主観をデータにした「研究」は研究でありうる、(3)対話で得られたデータに基づく「研究」は研究でありうるという3つの命題について認識論に言及しながら、段階的に明証しています。外国語教育分野の研究過程や論文執筆において、研究者の主観や対話をどのように活かすべきか、参加者同士のディスカッションを通して理解を深めます。

 

事前課題:『質的研究における対話の可能性―方法の探究』(沖塩,2020)を各自ダウンロードし。事前にお読みください。読んでいることを前提に、グループに分かれてディスカッションを行います。(論文の解説は行いません。)

論文のリンク:https://cir.nii.ac.jp/crid/1050285700277104512

 

(休憩5分)

 

3. 懇談会 16:00-17:00

本日の研究会の内容、皆さまの近況などについて、自由に情報・意見交換をします。各自飲み物等をご準備ください。

第41回外国語教育質的研究会

日時:2022年3月19日(土)13:00-16:00 (懇談会16:00-17:00)

*Zoomによるオンライン開催

 

 

1話題提供とディスカッション 13:00-16:00

 

ファシリテーター: 髙木亜希子(青山学院大学)

 

題目:『質的言語教育研究を考えよう:リフレクシブに他者と自己を理解するために』に基づいて:質的研究における「意味」とリフレクシビティ

 

概要:八木真奈美・中山亜紀子・中井好男(編著)(2021)『質的言語教育研究を考えよう:リフレクシブに他者と自己を理解するために』の第2章と第3章(八木真奈美・中山亜紀子氏執筆)に基づき、参加者同士でディスカッションを行い、質的研究における「意味」とリフレクシビティについて理解を深めます。第1部は、質的研究における「意味」について考えるために、質的研究におけるパラダイム、意味の理解、研究のゴールについて、本章や他の文献等を参照しつつ、用語や概要を整理してファシリテーターが話題提供をします。その後、ディスカッションのテーマを設定し、小グループに分かれてディスカッションを行います。第2部は、研究者とリフレクシビティ、研究のプロセスにおけるリフレクシビティを中心に、第1部と同様に、ディスカッションのテーマを設定し、小グループに分かれてディスカッションを行います。本話題提供とディスカッションにより、参加者の皆さんがご自身の実践や研究についても振り返る機会となるでしょう。

 

第1部 「質的研究における『意味』(第2章)」について考える 13:00-14:25

  

(休憩5分)

 

第2部 「リフレクシビティ(第3章)」について考える 14:30-15:55

 

事前課題:『質的言語教育研究を考えよう:リフレクシブに他者と自己を理解するために』

の第2章と第3章を事前にお読みください。読んでいることを前提に、ディスカッションを進めます。

 

(休憩5分)

 

2. 懇談会 16:00-17:00

本日の研究会の内容、皆さまの近況などについて、自由に情報・意見交換をします。各自飲み物等をご準備ください。

第40回外国語教育質的研究会

日時:2022年1月8日(土)13:00-16:00 (懇談会16:00-17:00)

*Zoomによるオンライン開催

 

 

1.研究発表 13:00-14:25

 

題目:「第二言語話者の排除とその不快感の探究:授業観察とナラティブデータの分析から」

 

発表者: 清田顕子(早稲田大学大学院教育学研究科)

 

概要:英語による専門科目授業(English-medium instruction (EMI) 、以下EMI)教室内で受講生の間に英語力に差がある場合、相対的な英語力が低くなる受講生は発言が少なくなり、ディスカッション場面で疎外感を感じることが先行研究で報告されている(Iino, 2019; Iino & Murata, 2016; Kojima, 2021)。しかし、このようなEMI教室において、疎外感がどのように共同構築されているかを検討した研究は少ない。そこで本研究は、教室内での言語の使い方がどのように意図せず疎外感を共同構築するか、事例研究(Duff, 2008; Yin, 2018)で探索することを目的とした。研究対象の場として、ディスカッションが多く行われ、受講生間に英語力の差があるEMI教室に着目し、教室の観察データ、焦点参加者の振り返り日誌、インタビューデータを収集した。その結果、テンポの速いやりとりや排除のジェスチャーが、相対的な英語力が低い受講生のディスカッションへの参加を阻害していることがわかった。インタビューは、相対的な英語力が低い受講生と流暢な英語話者の双方に行い、双方の見解に光を当てた。インタビューの語りは、Labov (1972)の構造コーディングを応用したRiessman(2008)の構造分析を行い、語りがどのように組み立てられ、意味が形成されているか分析した。分析結果から、双方がお互いへの期待にすれ違いがあることが明らかになり、疎外が意図せずに共同構築されていたことが示唆された。

 

 この研究はパイロット研究データを分析したものです。当日は、皆さま方から様々な観点のコメントを戴きご教授いただけますと幸いです。

 

 (休憩5分)

 

2. 研究法紹介 14:30-15:55

 

題目:「テキストマイニングの理論と実践」

 

発表者:いとうたけひこ(和光大学)

 

概要:本報告では、初めにテキストマイニングという研究手法の紹介し、その特徴について述べる。第2に、テキストマイニングの有効性について探索的研究、仮説検証的研究、仮説生成的研究のそれぞれについて解説する。第3に、テキストマイニングの単独的利用と混合研究法的利用について概観する。次に、分析対象が情報的な性格を持つものと語り(ナラティブ)的な性格を持つものの特徴を比較する。さらに、テキストマイニングの限界について述べる。

最後に、時間をとって無料で使えるテキストマイニングオンラインソフト(ユーザーローカルhttps://textmining.userlocal.jp/)を紹介し、実習を行う。

実習にあたり、(1)インターネットにアクセス可能な状態にしておくこと、(2)テキストマイニング分析対象となるような文字データを準備しておくこと(20万文字以内でワード、エクセル、またテキスト形式のデータ。pdfや画像ファイルは不可。テキストの内容は自由。特にデータがない場合は、自分の書いた論文やウェブサイトの文章をテキスト化したものでもよい。)

参加者はテキストマイニングの特徴の基本的理解と実践的な体験学習を行う。また、ソフトの選択法(KH Corder, Text Mining Studio)についても理解を深めることができるだろう。

 

なお発表者は心理学者で、これまでテキストマイニングに関しては、論文出版(日本語35本、英語4本)、口頭発表(日本語48本、英語15本)を行っている。

論文 https://www.itotakehiko.com/papers/ 

学会発表 https://www.itotakehiko.com/conferences-1/

 

【事前学習(オプショナル)】

1) ユーザーローカル https://textmining.userlocal.jp/で例題「走れメロス」をクリックしてみること

2) 以下の論文を読んでおくこと (PDFをクリックでダウンロード可能)

R167 いとうたけひこ (2013). テキストマイニングの看護研究における活用,看護研究,46(5), 475-484. (PDF) 

3) いとうのテキストマイニングスタジオの研究例を以下のサイトで眺めておくこと(青字をクリックで論文をダウンロード可能)https://www.msi.co.jp/tmstudio/itoRoom.html

 

(休憩5分)

 

3. 懇談会 16:00-17:00

本日の研究会の内容、皆さまの近況などについて、情報・意見交換をします。各自飲み物等をご準備ください。

第39回外国語教育質的研究会

日時:2021年6月20日(日)13:00-16:00 (懇談会16:00-17:00)

*Zoomによるオンライン開催

  

1. 話題提供 13:00-14:25

題目:「アメリカ心理学会投稿マニュアル第7版(2020)の新基準JARS:質的研究者VS量的研究者の和解と連携のために」 

 

発表者:いとうたけひこ(和光大学)

 

概要:アメリカ心理学会は、Publication Manual第7版(2020)(以下、APAマニュアル)において、論文投稿者と査読者に向け画期的な提案を行いました。APAマニュアルは、心理学のみならず、論文形式の標準的な規範として、応用言語学・英語教育学を含め、様々な学術誌で採用されています。

 一般に、質的研究論文を投稿すると、査読者の一人は、質的研究方法の専門家で、もう一人の査読者は、その分野の専門家という組み合わせが多いです。後者が量的研究しか経験がない場合、量的研究のパラダイムで見当外れな査読をし、その結果、不当な査読コメントにより、投稿者が修正・再投稿を諦めざるを得ず、泣き寝入りすることもあります。これまで、質的研究と量的研究の間には、深くて暗い川が流れていたのです。

 両者の橋渡しとして、第7版のAPAマニュアルでは、Journal Article Reporting Standards(JARS)という新しい基準が設置されました。この基準では、量的研究法、質的研究法、混合研究法における投稿論文の書き方及び査読者の心得が提案されています。JARSの意義は、3点あります。第一に、質的研究の論文執筆の作法が分かります。第二に、量的査読者の質的研究に対する枠組みが提案されています。第三に量的査読者による質的研究への不当な要求が抑制されます。

英語教育では、主にAPA方式が採用されている状況を鑑み、本発表では、質的研究がより公正に査読されるための強いツールを皆さまに紹介します。なお、発表者は心理学者で230本以上の論文を出版しています。本人はテキストマイニングを含む量的研究者ですが、質的研究者との共同研究も多数出版しています(https://www.itotakehiko.com/papers/)。

 

(休憩5分)

 

2. 話題提供 14:30-15:55

題目:『英語教育論文執筆ガイドブック』の質的研究論文事例:論文執筆者による解説と考察

 

発表者:髙木亜希子(青山学院大学)

 

概要:本話題提供では、話題提供1を踏まえた上で、発表者が執筆した質的研究論文について解説と考察を行います。2020年に出版された『英語教育論文執筆ガイドブック:ジャーナル掲載に向けたコツとヒント』(廣森友人編著)は、国内の英語教育系の学術誌に論文を出版するための方法やコツを整理したもので、経験豊かな研究者らにより執筆されました。本書で紹介されている投稿テンプレートと記述は、アメリカ心理学会、Publication Manual第7版(2020)のJournal Article Reporting Standards(JARS)が反映されています。

 第3章「実証研究II(質的研究)」は、1. 質的研究手法を用いた論文とは、2. 質的論文に書くべきことは 3.英語教育研究における質的研究のアプローチと分析手法、4. 質的研究をまとめるにあたって気をつけるべきポイントで構成されています。本章では、事例として発表者の論文が取り上げられ、APAマニュアルの「質的研究論文報告基準」に基づき分析されています。本話題提供では、第3者による分析と照らし合わせ、論文の構想からデータ収集・分析、 査読者のフィードバックによる論文修正、出版まで、当時を振り返り、発表者の葛藤や反省にも触れながら解説をします。なお、事前に当該論文を読んでおいていただけますと、議論がより理解しやすいでしょう。

 

事例論文

「若手教師による学びと成長の軌跡―授業研究協議会後のインタビュー分析に基づく教師の認知」『言語教師教育』5(1) 47-67. https://www.waseda.jp/assoc-jacetenedu/VOL5NO1.pdf

 

(休憩5分)

 

3. 懇談会 16:00-17:00

本日の研究会の内容、皆さまの近況などについて、自由に情報・意見交換をします。各自飲み物等をご準備ください。