2014年度研究会(第16回~19回)

第19回外国語教育質的研究会

日時:2015年3月7日(土)14:00-17:00
場所:青山学院大学第14号館総研ビル9F第16会議室

1. ディスカッション 14:05-15:25

『英語教育』2月号(大修館)掲載の特集、「質的研究」のすすめ
の研究事例3点(pp.22-31)についてディスカッションを行います。
事前に読んできてください。
①中学校英語教師の学びの軌跡
②質的研究により「教室生活の質」を高める
③学生インタビューを大学リメディアル教育に生かす

 

2. 話題提供 15:40-17:00

発表者:望月正道(麗澤大学)

題目:ベテラン英語教師は、若手英語教師の授業にどう助言するか―授業研究協議の会話分析から

概要:
 新任教師は教育実習以外は実践的に教える経験はなく、毎日の授業を通して教え方を学んでいく。佐藤(1989)は初任教師の抱える問題として、①子どもに対応する経験と技術の不足、②子どもに合った授業を構成する能力と技術の不足、③自分の授業を自己診断し,改善方法を発見する力の不足、の3つを指摘している。東京大学COE基礎学力研究開発センターの2006年の調査によると、全国の小中学校の校長が教師に最も求められる力量は授業での指導技術、さらに、教師の専門性を高める研修として最も望ましいのは授業研究であると回答している(秋田、2008)。教師は他の教師の授業を参観することで発問や指導法など表面に表れる教え方を学ぶことができるが、1人で授業行為の背後にある教師の考え方まで学びとるのは難しい。秋田(2008)は、教師は授業について「何を捉えどのように関連づけ意味づけて捉えているかを語り合うことで、授業を言語的に再構成して考え学ぶ場」(p.118)として授業検討会を位置づけている。新任教師は、佐藤が指摘するように自ら授業を自己診断し、改善方法を見つけ出すことが難しいため、「授業を言語的に再構成して学ぶ場」である授業研究は教師の力量を形成する上で重要といえる。
 この話題提供では、公立高校での教員歴3年目の若手英語教師の授業を研究協議し、ベテラン英語教師がどのような助言をするかについての質的研究の試みについて発表する。平成25年6月から11月の高校2年生の授業4回をビデオ撮りし、それぞれについて研究協議を行い、それを録音した。それを逐語化したデータをベテラン教師は、若手教師の授業の何を問題と考え、されに、それについてどのような助言を与えたのかを分析する。

第18回外国語教育質的研究会

日時:2014年12月20日(土)14:00-17:00
場所:青山学院大学総研ビル(14号館)8F 第10会議室

 

1. 研究発表 14:05-15:25

発表者:東條弘子(東京大学大学院研究員)

題目:中学校英語科における教室談話研究:
   文法指導とコミュニケーション活動の検討

概要:本研究は、中学校英語科授業において文法指導、ならびにコミュニケーション活動が実施される際の教室談話の様相に着目し、教師と生徒による発話の特徴を明らかにすることで、教授・学習
過程を捉えることを目的とした。なお、本稿は教歴30年目を迎える研究協力者教師との5年間の共同研究に拠っており、本発表では当該教師による実践報告の映像視聴後に、全5部11章から成る本論文
について概説する。第Ⅰ部「問題と目的」では、参加者の社会的文脈をふまえ、教育内容と教室談話の関係に着目し、初級学習者の言語学習過程を縦断的に分析する必要性を述べた。また、国内英語教育界で対立的に論じられてきた文法指導とコミュニケーション活動を、社会文化理論 [Sociocultural Theory] に即して包括的に捉えることの有用性を論じた。第Ⅱ部「社会的生活に起源を持つ発話の特徴」では、参加者の発話内容に見られる生活経験を社会的生活とみなし、文法指導とコミュニケーション活動各々での生徒による発話の特徴を分析した。第Ⅲ部「学習内容の理解を媒介する生徒の発話の特徴」では、文法指導とコミュニケーション活動でのどのような発話が、学習内容の理解を促進する可能性があるかを検討した。第Ⅳ部では、「発生的分析」に依拠し、教室談話の様相を縦断的に分析し、生徒3人と教師による発話の特徴を捉えた。第Ⅴ部「本研究の総括」では、結果の総括、成果、今後の課題を記した。

 

2. ワークショップ 15:40-17:00

発表者:武田礼子(青山学院大学非常勤講師)

題目:TESL/TEFLにおける会話分析:事例紹介とワークショップ

概要:本ワークショップの前半では、TESL/TEFLにおける会話分析の概要、
そして会話分析を使った研究事例を紹介し、後半では音声を聞いた後、逐語録に会話分析の記号を入れることで、会話分析の初歩的な取り組みを経験することを目的とする。
会話分析とは会話のみならず、相互行為におけるすべての行動を解明する方法(Schegloff et al., 2002) であると定義されている。1960年代より、アメリカで社会学の調査法として使われ始め、2000年ごろより英語教授法の研究においても注目されてきた。会話分析の概念には、会話における発話者の話す順番交代のシステム (turn-taking system)、発話の修復 (repair) 、決まった表現の受答えを表す隣接ペア (adjacency pair) 、発話者の間のトピックの展開(topic development) などがある。英語の授業中の相互行為を会話分析すると、2つの現象が見える。ひとつは英語教師の発話、もうひとつは学習者同士の発話であり、それぞれの研究事例を紹介する (Wong & Waring, 2009; Takeda, 2012)。
 ワークショップの後半では、初歩的な会話分析に取り組む。ある日本語のトークショーで繰り広げられる司会者とゲストの会話を聞き、会話分析で使われる記号を逐語録に入れることで、会話のみならず、それ以外に浮き彫りになる行為を考察する。

第17回外国語教育質的研究会

日時:2014年9月27日(土)13:30-17:30
場所:立命館大学びわこくさつキャンパス (BKC)
   アドセミナリオ 214教室

 

1. 輪読  13:30-14:20
指定図書:Barkhuizen, G. (ed.) (2013) Narrative Research in Applied Linguistics
Chp.12 Narrative writing as method
皆さんと意見交換する予定ですので、各自読んでいらしてください。
 
2. 研究発表 14:35-15:55
発表者:千田誠二(和光大学)
題目:学生の英語学習不安に関する質的研究
-「活動・場面」ごとに関する言語データの分析とその考察-
概要: 本研究は大学生の英語学習に対する嫌悪感が高まっている(Tsumura,2010 etc.)
現状を改善する目的で、彼らが英語授業活動時に抱く「不安」といった情意面に注目し、
言語データの質的分析を行ったものである。
英語学習がうまくいかなかった一部の学生を対象とした研究では、入学後の英語授業
開始時期に彼らが抱える「無気力の学習」、「不安の再来」といった(千田, 2012)
不安感の問題が、その後履修上の困難からくる防御・抵抗の姿勢につながり、満足の
いく教師-学生間の信頼関係構築に至らず、「英語教育的知識・技術を十分に生かす
段階」に教師が持っていけないというプロセスが明らかになった(千田, 2013)。
本研究では、上記の結果を踏まえて「各活動・場面」ごとに学習者の不安生起の要因
を質的に探ることが目的である。英語学習者の不安・動機づけの全体像だけでなく、
活動・場面の区分けを意識して言語データを分析・考察することが、英語が苦手な
学習者への対応を教師がより具体的に行う上でヒントになり得ると考えたからである。  
方法として、2人の大学生にインタビューを通して彼らの学習をふりかえってもらい、
不安を感じた瞬間について時間軸を意識しつつ、活動・場面ごとに語ってもらった。
発表ではそれらの結果を踏まえて、英語が苦手な学習者に対して教師がどのように
対応をし、教えていけばいいのかについてささやかな示唆を与えられればと思う。

 

3. ワークショップ 16:10-17:30
発表者:上條武(立命館大学)
題目: Mixed-methods(混合研究法)による論文の事例から質的研究について考える
概要: このワークショップではMixed-methods(混合研究法)を扱った論文の事例より、
質的研究の有効性を考えていく。論文では量的分析に加え、質的データをM-GTA
(修正グラウンデッドセオリー)により分析している。Mixed-methods(混合研究法)には
4つのデザインがあり、その認識にもとづき論文を読むと理解が高まる。論文の概要
解説の後に、参加者によるディスカッションによりさまざまな視点から、質的研究に
ついて学んでいく。

 

論文名
田中博晃 (2014).「特性レベルの内発的動機づけを高める授業と有用性の
欲求」英文タイトル Motivational Intervention and Satisfying Learners'
Need for Competence JALT Journal, 36, 91-123.

※論文は事前に読んできてください。

第16回外国語教育質的研究会

日時:2014年6月7日(土)13:30-17:30

場所:青山学院大学第18会議室(総研ビル10F)

 

1. 輪読  13:30-14:20

指定図書:Barkhuizen, G. (ed.) (2013) Narrative Research in Applied Linguistics
Chp.11 From transcript to playscript:dramatizing narrative research

皆さんと意見交換する予定ですので、各自読んで
いらしてください。

 

2. 研究発表 14:35-15:55

発表者:佐藤洋一(東京大学大学院)

題目:日本人ビジネスマンの英語使用に関するディスコース分析
概要:本発表は、日本人ビジネスマンが英語でミーティングを行っているコン
テクストに着目し、集団的意思決定を行う際、どのような英語使用が発生する
のか(その一端)を明らかにすることを目的とする。本研究の研究対象者は、
企業のグローバル化政策の一環として、海外OJT赴任前研修を受けているビジ
ネスマン5人である。本発表で分析の焦点を当てるのは、「同意」及び「不同意」
を示す際の言語使用である。また、本発表で紹介する分析の結果に基づき、参
加者の皆様の意見交換を通して、研究をブラッシュアップできれば幸甚である。

 

3. ワークショップ 16:10-17:30

発表者:髙木亜希子(青山学院大学)

題目:TAE入門~PartIを体験してみましょう~

概要:本ワークショップでは、質的研究法としてのThinking at the Edge(TAE)
(得丸、2010)の基本概念を紹介し、パートIを体験していただく。TAEは
質的研究法としてのみではなく、日常生活や教育にも使え、私自身大変魅力を感じている。
大きく分け、3つのパートで構成されており、パートⅠは、感受概念を得て、
データから理論を立ち上げる構えをつくる重要なパートである。ワークショップでは、
「授業がうまくいったとき」など参加者の皆さんにとって身近なテーマを取り上げ、
TAEの魅力の一端を体験していただきたい。